【開催レポート】Weave年末年越しダイアログ「リアルな対話や交流・体験を大事にしたい(~これからの地域のサードプレイスについて~)」(12/30開催)
2021年12月30日(土)19時より、Weave年末年越しダイアログ「リアルな対話や交流・体験を大事にしたい(~これからの地域のサードプレイスについて~)」を開催しました。今回は、オンラインのダイアログも行いつつ,WeaveのワークスペースOruも開放し,オンラインとリアル空間の場を繋いでのハイブリッド開催となりました。また,ゲストスピーカーとして,広島県東部の福山・尾道地域で,地域の交流の場の運営に取り組まれているONOMICHI SHAREの後藤さん,umbrellaの桒田さんのお二人を迎えて,オンラインでの対話が当たり前になった今,リアルな対話やそのための空間の価値や今後について考えるダイアログとなりました。
【イントロダクション・参加者自己紹介】
参加者の方から自己紹介を兼ねて近況のシェア。今回は、街づくり,コミュニティデザインやその周辺領域に関わられている方々に御参加いただきました。遠方からの参加に加え,実際にゲストの取組にも関わっておられる方の参加もあり,和やかな雰囲気の中での対話となりました。
【ゲストトーク1:後藤 峻さん(ONOMICHI SHARE)】
一人目のゲストは,後藤 峻さん。ONOMICHI SHAREのコンシェルジュ兼事業責任者をされています。
〇自己紹介と取組の概要説明
・2016に尾道に移住。人と話すことや自分と異なる価値観に触れることが好きです。
・ONOMICHI SHAREとは,尾道市内外の事業者や移住,二拠点ワーカーの活動拠点,移住検討者の相談窓口,ワーケーションによる尾道滞在の拠点となるシェアオフィス。もとは市の書庫だったのをリノベーションして設置。開設して7年。
・私はそこのコンシェルジュとして,多岐にわたる利用者さんが心地よく業務を進めてもらうためのサポート,施設を通じて上手くつながるためのサポート,尾道での滞在・目的達成のためのサポートを行っています。尾道で「つなげる」ことをしています。
・尾道の個人事業者さんとかワーケーションでのスポット利用が増えている。今年は2倍近くに増えました。
・コロナ禍で,取組の場がリアルからオンラインに移行した。半ば強制的に。どうしよう・・・。それで、ONOMICHI SHAREもワークスペースがあり,カメラがあり,Wi-Fiがありということで,何ができるか,考えました。
・一つはライブ配信。オノミチシェアチャンネルという名称で,尾道で働く人を繋ぎながら,尾道のことを外に発信していく取組。また,ワーク中にちょっとつまめる地元菓子のアソートとかも作ってみました。こういうもので,ワーケーションで来てもらっている人に少しでもよかったといってもらえる体験になればよいと思っています。コロナ禍で修学旅行がNGとなった学生が多い中,修学旅行のかわりの研修旅行として,尾道地域で体験学習をしてもらう取組も行い、東京からはるばる来られた学校もありました。オンライン上の会議スペースで,広島県内のコワーキングを繋いで,業者やクリエイターを繋いでいくというイベントも行ってきました。
・コロナ禍で「尾道に来てよ」と誘えなくなった中,シェアオフィスやコワーキングのリソースを使って 試行錯誤してやってきたというところです。
【ゲストトーク2:桒田 慶子さん(umbrella,福山とおり町商店街)】
二人目のゲストは,桒田 慶子さん コミュニティカフェumbrellaの運営など,福山とおり町商店街を中心にして,事業に取り組まれています。
〇自己紹介と取組の概要説明
・13年前にアパレルをリタイアしたのを機に,福山の本通り(とおり町)商店街でコミュケーションが苦手だと言われる方々を対象に講座などを行っていました。その中で,商店街を何とかしたいというオジサンたちと出会いました。当初は街づくりなど思いもしなかったですが,「何か楽しいことをしたらどうですか」と声をかけてもらって,今の取組を始めるきっかけをもらいました。
・現在は,とおり町商店街でコミュニティの運営をしています。大きく2つ,店舗があります。
・一つは街中情報室ぜっぴ。共同店舗で店舗の一角をレンタルボックスとして600円で貸し出し,店主になってもらいます。物の売買だけでなく,店主と客,店主同士,客同士の交流スペースになっています。ここでの交流をとても楽しみにされている関係者も多いです。店の運営も、ぜっぴ方式といって,マネージャー同士,オーナー同士で,日替わりで店長になってもらい,店を回しています。行政から「福山ブランド」の認定を受けたこともあります。地域外の関係人口も増やしながら運営してきました。
・もう一つがumbrella。学生や街づくりに興味のある方に参加して,空き店舗をリノベーションしました。今日の参加者の中にもコミュニティデザインの関係でお世話になった方もいます。キーワードは関係人口ということで,設立から運営にかけて,様々な方に関わっていいただいています。
・umbrellaの機能としては,誰でも気軽に立ち寄れるカフェであることのほか、ノウハウ提供のような事業支援も行っていて,起業される方もいます。そうした取組で出たumbrellaの利益を街づくりに還元するといった目的もあります。また,現場からの人材育成ということも取り組んでいます。各種マルシェの開催にも協力しているほか、空き店舗バンクやネットワークチームという行政のチームとも一緒に活動しています。今後は近隣の商店街と組んで課題解決にも取り組んでいきたいです。仲間と共に13年,あらゆる人の居場所となる空間,手が空いた時に,休みのときだけ手伝いたいというようなことの受け皿が必要と思っていて、サードプレイスのような場が必要と感じています。完璧でなくていいから、小さな一歩の積み重ねが大事で、他の人と一緒に作っていく共創力,助けてと言える受援力が大事と考えています。
【ダイアログ】
続いて、ゲストのお二人に、コロナ禍の前後で、どのような変化があったかをお聞きし、参加者と対話していただきました。
○後藤さんからのコメント
・尾道にどれだけの人に来てもらうかということに取り組んでいたが、コロナによって、これまでのやり方ではできなくなり、直前にイベント中止とかも経験しました。オンラインでの取り組みを進めたが,リアルな繋がりでできたコミュニティを維持していくというよりは、コロナが収まり、いつか実際に来てくれるまでは、オンラインを使って、自分たち方から、出ていこうという考え方にマインドシフトしました。
・オンラインは単なる手段であって,漫然と取り組んでいては効果が出ない。ONOMICHI SHAREにおける自分の取組のコンセプトを見直しました。その中で、ONOMICHI SHAREの価値やリソースをよくよく考えてみると、尾道という町にクリエイターがこれだけ集まることが資源であり,価値であることに気づきました。それを外向けに見せることで訴求できると考え、オノミチシェアチャンネルのアイデアに繋がっていくのですが、出演ゲストも自分で探すのではなく、ゲストの紹介で数珠繋ぎに繋いで行けたのがよかったです。私自身にとっても人脈やリソースが広がり、よかったと思っています。
・配信で話す内容は、ゲストのお仕事や経緯や人柄をただ聞いていくぐらいで考えています。そこまで思い詰めてはないし、僕が好きなことなので楽しいです。
・参加者からもホストやゲストが面白そうに話していたという感想をもらうこともあります。そういった感じを伝えていけたら,尾道では面白そうな人に会えると思ってもらえる。オンラインがリアルに繋がると思いました。すぐに効果が出るものではないが、オノミチシェアチャンネル見て尾道に来ましたという話も実際にあるんですよ。
・尾道は、クリエイターの移住者が多い気がします。尾道での暮らしを求めて、全国から集まってきている。ウェブデザイン,イラストレーター,漫画家,翻訳家など様々。最近ではテレワーカーの移住も増えてきていて、20〜30歳台の人が多いです。ただ、尾道に来るのはいいけど、どこで,人の繋がりをつくればいいのか分からず、人との繋がりを求めて、ONOMICHI SHAREも訪ねてみる。そういう流れが自然にできてきました。
○桒田さんからのコメント
・コロナ禍で人との接触が減ってしまったので、人恋しさが増した(笑)。何をするにしても、人の部分が大きいし強い。日々のコミュニケーションの大事さを痛感しています。
・福山は東南アジアの方から働きに来ている外国人の方も多く、そうした方々もコミュニティに加わっています。コロナ禍で大変な思いをされています。
・次代の人材育成について,若い人に現場で、自分の後姿を見ていただくようにしています。何をしているのかを見てもらって,若い人にも経験を積んで行ってもらいたくて、新しいチームを発足させました。今まで,商店街等のイベントに参加していなかった人に参加してもらっています。様々な取組みに関わっているが、イベントの実行委員長を3つほどバトンタッチした。若い人にバトンを引き継げるかどうか、次の展開が変わってくる。そういうことが大事。
【グループ対話1】
続いて、「コロナ禍においても、リアルな交流の場の取り組みを継続できている要因は何か?」という問いを立てて、オンライングループと会場グループの2グループに分かれて対話を行い、内容を共有しました。。
○会場グループからは・・・
対面でやり取りができるリアルオフィスの良さは変わらないが,その場に集まった人で足らないものを、ほかのシェアオフィスの人から支援してもらうなど,交流の場の内外でリソースを補い合いながら,取り組めているといいな〜と感じました。また、関係人口の文脈からも、都会と地方のシェアオフィスの補い合いが多くなると面白いと思います。人と人を繋ぐ際には、互いの興味関心の領域とか相性といったニュアンスをアナログで調整する必要があるけど、そこを上手に調整できる人材がいる交流の場は、コロナ禍であっても、うまく行っていると感じました。
○オンライングループからは・・・
・オンラインでできた繋がりが 心の支えとか次の取組のきっかけになったりとかしています。サードプレイスという言葉は以前からあるけど,コロナ禍での居場所というか、故郷に帰れなくなっている日本に働きにこられている外国の方とか,コロナ禍以前に想定されていたものとは、異なる要素や役割が出てきていると思います。
・いろんなものをかけ合わせて生まれるもの、1+1=2、という考えはわかりやすいですが、取り組みを続けてきて、1+1が2にも4にも6にもなっていくということを実感しています。そうした思いが強くなっています。多様な個性・強みを認めてあげるのではなくて,こちらが認めないといけない。人それぞれの強み・弱みというのを見極めながら,しっかり受け止めるという心構えが必要。うまくいかないこともあるが,答えを出す必要はないということ,時間を掛けて見守る,認めるということ、1+1が2にも4にも10にもなるということを、改めて自分に叩き込んで、やっていこうと、日々、反省しつつ、取り組んでいます。
【グループ対話2】
続いて、「リアルなサードプレイスで自分なら誰と何をしてみたいか?。そのためには何が必要で、自分はどうするか?」という問いを立てて、オンライングループと会場グループの2グループに分かれて対話を行い、内容を共有しました。
■グループ対話の内容・・・
・家と職場以外は 全部サードプレイスかも?。居酒屋もそうかもしれない。場所を変えたとしても仕事をしているのであれば、気分転換にはなっているが、やっていることは職場と変わらないですよね。
・コロナ禍でリモートワークが当たり前になり、仕事は外でも自宅でもしてよい。気分が変わっていれば、やっていることが同じでも、サードプレイスになるのだろうか?
・サードプレイスって 自分の居場所でこと?
・職場で仕事をするのが当たり前というのはサラリーマンの発想で,自営業だと,仕事は家でも外でもできるところでできればいいという感覚は、もともと持っています。
・そもそもサードプレイスの定義は、自宅でも,職場でもない,3つ目の場所。自宅や職場のほかに,自分が居心地がいい場所,自分が安心して存在できる場所が、サードプレイスって感じ。人によって、1か所だったり複数あったりする。
・プレイスって場所的な感覚だけど,気分とか時間とかそういう要素も必要。自分が普段できていないことをここならできる。本当は場所が必要だったんだけど,趣味の会とか、今はオンラインでもできるようになってきた。場というか機会というか、プライベートでも職場でもできないことができて、仲間と時間が共有できて、居心地が良い。
・何か訴求できるものがあるとサードプレイスになる。何かをやることだったり、誰かに会うことだったり、その場所でしかできないこと。そこに来る目的が必要になる。
・オンラインでの繋がりがないと,今日この場には来なかったと思う。オンラインでいろんな情報にふれられたので,ここに来られた。様々な交流の形について、リアルなグループとオンラインのグループの両方で対話ができている。そういうものを求めて今、この場に来ている。そういう時間が楽しいし、それで繋がりができるかもしれない。
・オンラインでないとできないこと,リアルでないとできないことの区別が必要。それぞれに強みと弱みがあるから。
・ONOMICHI SHAREでオンラインの取組をして,地元との繋がりが増えた。ONOMICHI SHAREが地域で認識されていない部分はあ理、当初は、地元での役割がないというか、そもそも用がない人には必要とされてなかった。コロナ禍で、多くの人がオンラインで物事に取り組む必要に迫られ、オンラインで何かできる人材がいなかったので,そうしたことに対応できるONOMICHI SHAREの役割を認めてもらえた。
■グループ対話の内容の共有
○会場グループからは・・・
・ サードプレイスってなんぞやという定義の話から。家でも会社でもないどこか、オンラインとの兼ね合いとか、場所として必要なのかとか。場所として存在して,小綺麗な環境を整えたから来てくださいではなくて,自宅や職場にはない、こういうことがあるから、こういう誰かと会えるからという,何か目的があるから集まるというのがサードプレイスなのかなということになりました。物理的な場所は必ずしも必要ではなく、オンラインでも良いと思います。
○オンライングループからは・・・
・人と人との繋がりみたいなことを話しても、コロナ前はあまり反応がなかったが、その価値が見直されている。そうした価値に基づいて、思いがあってやっていることは変わらない。オンラインが普及したおかげで,今まで想像していなかった繋がりもできるので,そういうものをで、わくわくすることを作っていくことができる。状況や求められる成果に応じてツールを使い分けていく。特別、オンラインが良かったというわけではない。状況がそうさせているだけで、以前の直接、人と接して話ができていたことが良かったなと思い出しながら取り組んでいるという話になりました。
【気づきの共有・クロージング】
最後に、参加者の皆さんの本日のダイアログで得た気づきを共有しました。
・リアルとオンラインの取り組みの整理をしたかったので,自分がコロナ禍において、やったこと,頭の中で考えたこと,今日皆さんと考えたことを整理できてよかったです。
・リアルな対話の場をどう運営していくか,ますます謎が深まりました。ありがとうございました。
・オンラインでしか会ってない人にリアルで会えてよかったです。オンラインがなかったら,サラリーマンで終わっていたと思います。こういった場に参加できたのがいいなと思っています。これからもよろしくお願いしたいし、これからも頑張ろうと思っています。
・リアルがメインでやってきたが,共通のテーマについての対話の場をオンラインでも持てるというのはよかったです。それがあると,リアルで会えるとなおうれしいということもあり,喜びが増えるということを感じました。
・コロナ禍で大変な状況だが、その中で、いるものといらないものが見えました。無理なものを無理だし,自分にとって大切なものを見極めるいい機会になりました。オンラインという場があってよかったです。
・キーワードは多様性。違いを認め合うということが大事。その逆は分断とか細分化だと思います。違いを認め合うというモチベーションを最初から持っていないと,これからは生きづらくなると思う。また、自立と自律の2つの要素がないと,これからのオンライン化の時代は、選択肢が多すぎて、自由が多すぎて、生きにくくなると思います。日本は同調圧力が強いので,そうした圧力がある方が生きやすい人が多いと思います。そういう人が,「自立を」といわれるとしんどいと思います。いい気づきがたくさんありました。
・去年は、Weaveの年末セッションができなかったので,今年はできてよかったです。我々にとっては,コロナ禍の中での活動をどうしようみたいな悩みが常にありました。いろんな制約はありますが、今後も淡々と取り組んでいきたいです。今日のような会で、こうした繋がりができるのはありがたいです。
以上のような気づきを共有し、ダイアログを終えました。
なお、、その後小1時間ほど延長戦があり、関連する話題などで大いに盛り上がりました。
【まとめ(ONOMICHI SHAREの後藤さんのコメントがよくまとまっていたので、使わせていただきます。後藤さん、ありがとうございます!。)】
・オンラインツールの普及で場所という概念が弱くなっている中で、「サードプレイス」「場所」という言葉を、どう再定義するか。居場所、待ち合わせ場所、何かを共有・経験する場,日常か非日常か,地域やコミュニティなのか、などなどはっきりとした再定義は難しかったです。
・そんな中で、皆さんと対話していて共通して感じたのは、コミュニケーションの部分がよく語られていたことです。リアルでもオンラインでも,やっていることはコミュニケ―ション。より有意義なコミュニケーションが行える機会やコミュニティを提供できることが大事なのかなと感じました。そのための手段や方法、場回しの技術とか、アウトプットとか,オンラインとリアルとで、共通するものもあれば別なものもある。別にしたほうが良いケースもあるし、連携させた方が効果が上がるケースもあります。
・ベースにあるのはコミュニケーションで、異なる個性(アイデアや価値観)を認めあうことや,共有していくこと、多様性が大事。コミュニケーションでもって、何を大事にして何を生み出していくか,何を目的にして。どうやって取り組むか,オンタイムなテーマであり、引き続き考え続けたいと思います。